看護師ブログ Part 5 重度の椎間板ヘルニアに対するリハビリテーション
2020.11.26
こんにちは。動物看護師の矢倉です。
今回は重度の椎間板ヘルニアに対するリハビリテーションの様子をお伝えします。
ミニチュアダックスの女の子、エメちゃんです。
2020年8月6日、他院にてCT・MRI検査を実施、椎間板ヘルニアと診断されました。来院時、後肢は麻痺しており歩行が困難な状態でした。
術後直後のリハビリテーション
多くの整形症例で機能改善を目指しリハビリを行います。さらに、術後の数日間は痛みや腫れを軽減する目的でもリハビリは行われます。手術翌日からレーザーや電気刺激、屈伸運動、マッサージ、肢裏をつまんで刺激するなどの感覚刺激を中心にリハビリを開始しました。刺激してあげることで障害を受けた神経の回復を促します。
エメちゃんは約1ヶ月間入院し、入院中は毎日リハビリを行いました。退院後も通院でのリハビリが続きます。
術後10日目の院内での歩行の様子です。肢先は少し動くものの後肢は常にナックリングした状態です。支えがなければ前肢のみで移動し、後肢は引きずっています。ナックリングとは足の甲が地面に着いた状態のことを言います。
ご自宅でのリハビリ
オーナー様にもご自宅でできるリハビリをいくつかお伝えし、行って頂きました。今では外にお散歩に行けるようになりました。
水中トレッドミル
水中では浮力により荷重を低減することができ、肢を動かすことにより水の抵抗が加わり筋力強化になります。さらに水が体を支えてくれるため、陸上で歩くよりもバランスがとりやすくなります。術後10日目の術部の抜糸後に水中でのリハビリを開始しました。初めは尻尾を刺激し反射を促したり、後肢の動きを補助しながらの歩行です。支えがなければ後肢は常にナックリングした状態です。
術後14週目の水中歩行の様子です。ふらつきはあるもののしっかりと踏ん張って歩けるようになりました。まっすぐ歩かせるために横にバランスボールを置いています。
水泳
歩くことが困難な子に対して水泳が効果的である場合があります。術後3週目からはさらなる後肢の筋力増強とバランス感覚の向上を目指し、水泳を開始しました。まだ陸上では立ち上がって歩くことができませんでした。しかし、水中では後肢を動かしバランスをとりながら泳げています。安全のためライフジャケットを着用しています。エメちゃんは初めから怖がらず水中でのリハビリができました。
ポール・S字歩行
徐々に起立を維持できるようになり自力でも数歩、歩くことができるようになり始めた術後7週目頃から、ポールをまたいだり、S字歩行を開始しました。ポールをまたぐ様子です。初めは後肢をハーネスで補助しています。またぐ様子はありますが、ポールにあたっています。
術後14週目の様子です。支えがない状態での歩行が可能となりました。少し不安定ではありますが、ポールを高くしてもしっかりと後肢をあげ、片肢でもバランスをとりながら上手にまたいでいます。
S字歩行の様子です。お外でのリハビリが楽しいのかとても積極的です。
エメちゃんの表情も歩けなかった頃と比べると、とても嬉しそうです。
バランスボード
自力歩行に必要なバランス感覚の向上を目指します。バランスボードでの起立維持の様子です。術後14週目から開始しました。左右に揺らしながら行います。ここから徐々に不安定な床の上でのリハビリを取り入れて行きます。
ダイエット
エメちゃんは術前に体重が約9kgありました。そのため、リハビリを実施していくにあたり腰に負担がかかると判断し、リハビリと同時にダイエットを開始しました。今では約2kgの減量に成功し、体が軽くなったことも歩行の改善に繋がったと言えます。
ダイエット前
ダイエット後
最後に
今回、エメちゃんは重度の椎間板ヘルニアであったにも関わらず、ここまで回復しました。それは、発症後すぐに手術ができたこと、オーナー様のご協力もありリハビリを継続できたこと、そして何よりも、エメちゃんが一生懸命頑張ってくれたからです。
まだ少しエメちゃんのリハビリは続きます。一緒に頑張っていきます。