お知らせ

こんにちは。獣医師の永井です。

今回は、会陰ヘルニアについてです。会陰ヘルニアは、直腸周りの筋肉が萎縮して骨盤腔内の臓器が肛門周囲の皮下に変位する疾患で、犬や猫のみならず、人でも発症して外科的整復が必要となる疾患です。原因として、未去勢（男性ホルモン）、腹圧の上昇、外傷などが挙げられます。私が獣医になりたての頃は、未去勢のワンちゃんが多かったせいか、よく診る病気の一つでした。ここ最近は予防医療が浸透し、減少傾向だと思います。症状は排便困難が最も多く、その他に排尿困難、消化器症状などが挙げられます。

今回治療させていただいたワンちゃんは、「日によって便秘になり、便が出ても形が細くおかしい」との主訴で来院されました。肛門の右側の皮下に、石のように硬くなったテニスボール大の宿便を認めました。本人は便が出づらい以外はとっても元気なのですが、 硬くなった便が肛門を塞いでおり、想像するだけでもとても辛そうです。

一般的な治療法は、手術による骨盤隔膜の再建と去勢手術になります。自分の筋肉や靭帯などを用いた整復法や、人工物のメッシュを用いた整復法などがあり、重症度や筋肉がどれくらい残っているかによって方法を検討します。

このワンちゃんは、自分の筋肉がそこまで弱っていなかったため、最もシンプルな筋肉と靭帯を縫合する方法を選択して、無事に整復することができました。

術後は思ったように便が出ず心配でしたが、1週間ほどで手術前よりスムーズに排便できるようになりました。これからも、よく食べてよく出して元気でいてね！