獣医師ブログPart:5 犬の乾性角結膜炎について
2020.11.30
こんにちは、獣医師の吉田です。今回は乾性角結膜炎(かんせいかくけつまくえん)について書かせていただきます。
乾性角結膜炎とはKCS(keratoconjuctivitis sicca)とも呼ばれており、涙の量の低下に伴い角膜(黒目)や結膜(白目)の慢性炎症と視覚機能の異常を引き起こす眼疾患です。
犬ではよく見られますが、猫では非常に稀です。
また、ヒトのドライアイと症状などがよく似ているので同じ意味で使われることがありますが、厳密には違うものになります。
- 原因
先天性(生まれつき)、後天性(生まれた後に発症)に分かれます。
犬では後天性の自己免疫疾患と呼ばれる免疫の異常が一般的だとされています。
- 好発犬種
イングリッシュ・ブルドッグ
フレンチブルドッグ
ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
ヨークシャー・テリア
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
アメリカン・コッカー・スパニエル
シーズー
パグ
ペキニーズ
サモエド
など
- 症状
状態により様々ですが、乾燥した眼の表面、ねばついた目やに、結膜の充血や、色素沈着が見られます。目をこすったりする行動も一つのサインです。
また、目が乾いた状態が続いていると角膜に傷がつきやすいので注意が必要です。
実際のKCSの症例です。
- 検査
シルマー涙液試験と呼ばれる涙の量を測定する検査を行います。
涙液量が15mm/分より少なければKCSと診断します。
- 治療
原因が明らかであればその治療を行います。
犬で一般的な自己免疫疾患によるKCSの治療では、免疫抑制剤であるシクロスポリンの点眼が使用されることが多いです。また眼表面に潤いを与える目的で、人工涙液やヒアルロン酸ナトリウム点眼などを組み合わせて使用する場合もあります。
治療反応は様々で、効果が得られるまで長期間を要する場合もあります。また、点眼をやめてしまうと再発するケースも少なくありません。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
眼疾患は気がつきにくいものが多いと思います。日頃から、そばにいるワンちゃん・ネコちゃんとアイコンタクトをとってみてください。
何か気になることがございましたら気軽にお声掛けください。