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肺腫瘍 肺葉切除 

こんにちは。獣医師の永井です。今回は、肺腫瘍についてです。

ワンちゃんの肺腫瘍の発生は、人と比べて発生は稀であり、肺腫瘍のほとんどが悪性腫瘍です。原発性と転移性腫瘍があり、転移性腫瘍の方が発生率が高いとされています。原発性肺腫瘍の場合、直径が5cm以下で、一個だけ、リンパ節転移のない腫瘍は、手術で取りきれれば予後は比較的良いとされています。
症状は、咳や痰、呼吸が早いなどが多いですが、かなり大きくなるまで無症状の場合もあります。

今回治療させていただいたワンちゃんは、これまで供血に協力してくれて、たくさんの命を繋いでくれたワンちゃんで、関節鏡検査の麻酔前検査で肺にしこりが見つかりました。肺には7cmほどのしこりがありましたが、本人に自覚症状はなく至って元気でした。

CT検査では、左前葉に7cmのしこりが1つ、右後葉に2cmのしこりが1つ見つかりました。お腹や、頭の方には腫瘍らしき病変はなく、転移性の肺腫瘍は否定的でした。左右の肺にしこりがあり、肺の中で転移している可能性が考えられましたが、その他には肺内転移を疑う病変がないため手術は可能と考えて、飼い主さんと相談の上、両方とも切除することになりました。

肺は全体の50〜60%切除すると術後に呼吸状態が悪くなるため、大きい方は肺を丸ごと切除、小さい方は特殊な器具を用いて部分切除にすることで、肺は70%ほど残せるように計画しました。

手術は左右から肋間開胸を行い、それぞれの腫瘍を無事に取ることができました。

しかし術後24時間ほどで出血があり、輸血が必要な状態に。藁にもすがる想いで電話した飼い主さんは、快諾してすぐに連れてきて下さいました。いつも急な電話に嫌な顔1つせずに協力してくださる多くの飼い主さんとそのご家族に、動物達も私たちもどれほど救われた事か、この場を借りて感謝申し上げます。

その後、出血はすぐに止まり、呼吸も問題なく、元気に帰って行きました。

病理検査結果は、「左肺前葉: 組織球性肉腫、右肺後葉: 乳頭状肺腺癌」
どちらも取りきれているとのことで一安心。

今後は抗癌剤での治療が続きますが、少しでも長く穏やかに生きられるよう精一杯サポートしていきます。

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