肺葉切除、肺葉捻転、肋間開胸
2024.02.15
こんにちは。獣医師の永井です。
今回は肺葉捻転についてです。
犬猫の肺はバナナの房のように前葉、中葉、後葉(副葉)に分かれており、その1つないしは2つが根本から捻れてしまう事により「肺葉捻転」という状態になります。原因として、胸水貯留から2次的に起こる場合と、自然発生する場合とがあり、ボルゾイなどのように胸の深い犬種に起こることが多いとされていますが、日本ではパグにもよく発症する事が知られています。好発部位は左右の前葉と右中葉で、後葉は横隔膜と靭帯で繋がっているため発症は極めて稀とされています。
症状は、急性の呼吸困難、低酸素血症、元気消失、嘔吐、発熱などがあります。
今回治療させていただいたワンちゃんは1ヶ月前に呼吸困難となり、かかりつけの病院でCT検査等を行ったところ、肺腫瘍の疑いがあると診断されセカンドオピニオンで来院されました。
持参されたCTを拝見したところ、右前葉の腫大、内部に細かい泡、血行不良、胸水貯留が認められ、右前葉の肺葉捻転と診断しました。
黄色矢印=捻転した肺
青丸=大量の胸水
この時ワンちゃんはすこぶる元気でしたが、一度捻れてしまった肺は戻ることはなく、血行不良による壊死や感染が起こる可能性があるため、肺葉切除を行う事になりました。
手術は肋間開胸で行い、癒着を剥がし、血管と気管支を結紮切離して肺葉を切除しました。
手術翌日は少し痛そうな表情でしたが、ご飯もモリモリ食べて術後4日で退院しました。
ワンちゃんも飼い主さんも不安から解消され、笑顔で帰って行かれました。
先生から胸の中や肺に影があると言われると、不安な飼い主さんも多いと思います。肺の病気でお困りの方は、是非当院にご相談ください。