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膀胱部分切除、尿管膀胱新吻合、膀胱腫瘍

こんにちは。
獣医師の永井です。

今回は、膀胱腫瘍(移行上皮癌)についてです。
膀胱の移行上皮癌は、泌尿器系の腫瘍の中で最も多く、その性質から完治が難しい病気と言われています。
症状は、頻尿、血尿、しぶりなどの膀胱炎の症状と同じですが、進行すると尿道閉塞や尿管閉塞を起こし、尿が出なくなる急性腎不全になることもあります。

完治を目指した治療は、膀胱と尿道を全て切除することになります。ですが、尿は垂れ流しでオムツをつけた生活になり、細菌感染などにも弱くなるため、生活の質は落ちることになります。人医療でも、尿路全摘出はQOLを著しく低下させるとされています。排尿機能を残した膀胱部分切除は、再発率が70%ほどあり手術の意義があるのかはっきりしていませんでしたが、近年いくつかの報告で手術をした方が生存期間を2倍以上延ばせることが分かっています。

治療させていただいたワンちゃんは、超音波検査で偶然に膀胱腫瘍が見つかりました。膀胱鏡検査、CT検査で精査しましたが、幸いにも初期で転移もありませんでした。尿路全摘出によるQOL低下が懸念されたため、膀胱部分切除と両側の尿管転植を行いました。病理組織学的検査では、移行上皮癌で取り切れているとのことでした。

↑赤いイソギンチャクのようなものが腫瘍です。

 

術後経過は良好で、4日目に元気に退院しました。合併症として尿漏れが長く続いていますが、ひとまず再発や転移はなさそうでホッとしています。
何も症状がなく唐突に腫瘍が見つかり、飼い主さまも複雑な心境だったと思いますが、迅速な判断をしてもらったおかげでしっかりと治療することができました。

まだ治療半ばですが、これからも元気でいてね!

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