両側 尿管結石摘出手術(猫)
2023.07.29
・今年の1月に尿管結石のブログを上げていますが、今回は両側の尿管結石についてお話しします。
症例:雑種猫 8歳 去勢雄
・2021年9月より慢性腎不全(IRISステージII)の治療開始
・ラプロスを投薬、自宅にて皮下点滴、食事療法 を継続
2023年5月の定期検査では BUN 38.6 mg/dl 、Cre 2.04 mg/dl 、P(リン) 3.6 mg/dl でした
・2023年7月に食欲不振・元気消失が認められ、かかりつけの病院で腎数値の悪化を確認
→ BUN 81.6 mg/dl 、Cre 6.05 mg/dl 、 P(リン) 8.8 mg/dl (入院管理するも改善傾向なし)
・両側の尿管結石(腎盂拡張あり)が見つかり、外科治療を目的に当院へ
→ 来院時 BUN 121.4 mg/dl 、Cre 7.85 mg/dl 、P(リン) 15.0 mg/dl
<手術:両側尿管切開術>
・術前CT検査にて両側の尿管結石の個数・位置を確認しました
(右尿管結石 2つ(隣り合うように)、左尿管結石 1つ。 両側とも腎臓から出てすぐの位置で閉塞)
・尿管を結石の直上で切開(両側とも1ヶ所)して、摘出後6−0の吸収糸で3糸縫合
腹腔持続吸引ドレーン(腹水の量を確認)を設置して手術終了しました。
・術後1日目より腎数値は改善傾向→ BUN 90 mg/dl 、 Cre 6.0 mg/dl
・術後4日目には BUN 42 mg/dl 、Cre 3.7 mg/dl まで下がり、腎盂拡張も改善傾向です。
・術後6日で退院
・結石の培養検査は陰性、結石分析は「シュウ酸カルシウム結石」でした。
<コメント>
・元々慢性腎不全の症例は、腎数値の悪化の原因が『腎不全の進行』によることもあります。
・今回は、手術により腎数値の改善が認められたことから、『両側の尿管結石による尿路閉塞が引き起こした”水腎症”によるもの』と考えられます。
・このように、腎機能が残されているうちに手術をしてあげると改善する症例もいます。腎不全や尿石症で不安なことがある飼い主様、いつでもご相談ください。