ケースレポート No.2 股関節人工関節全置換術(外傷性股関節脱臼)
2022.04.28
犬種 : トイ・プードル 年齢 : 11歳 体重 : 4.8kg
診断 : 股関節脱臼(外傷性)
2021年9月12日 麻酔下 非観血的股関節脱臼整復 + エーマースリング包帯
9月16日 再脱臼 確認
9月26日 左:股関節人工関節全置換術 実施 ( KYON 社 mini THR )
ケースレポート No.2
今回は「外傷性股関節脱臼に対して、股関節全置換術を行なった症例」です。
ご自宅のベッドの隙間に足を滑らせてしまい、その時に脱臼してしまったものと思われます。来院同日に、麻酔下での非観血的整復を行い、エーマースリング包帯にて後肢を固定しました。後日レントゲンにて再脱臼が確認されたため、股関節人工関節全置換術を行う運びとなりました。
脱臼時のレントゲン画像
エーマースリング包帯後のレントゲン画像
非観血的整復後 4日目に再脱臼を確認したため、股関節全置換手術を実施しました。
術後レントゲン画像
大腿骨が扁平な形をしていたため、予定していたインプラント(ステム)の厚みが合わず、大腿骨の髄腔内を削るなどの試行錯誤をしました。最終的に、体重強度の許容範囲内で1サイズ小さいインプラントを使用しました。
2週間のケージレスト、並びにレーザー療法を行いました。術後1週間ほどで痛みや違和感が治まってきたのか、徐々に患肢への負重がしっかりしてきました。ケージ内での動きには大きな問題は感じられず、退院時の歩様も良好でした。脱臼症例ということもあり、筋肉量に左右差がなかったことが歩様の安定に繋がったと考えられます。
術後1ヶ月半、術後3ヶ月の検診でも、足の様子は良好で、大腿分の筋肉量に左右差はありませんでした。
術後3ヶ月検診時の歩様です。
いずれも、足の負重に左右差は感じられず、歩様は良好です。
今後は術後半年と術後1年での検診を行い、様子を確認させていただきます。
股関節脱臼の治療に関して。
外傷性の股関節脱臼に関しては、温存的治療として「非観血的股関節脱臼整復処置」や温存的外科治療として「股関節脱臼整復手術(ノーレス法)」が行われます。
救済的外科治療として「大腿骨頭切除手術」「股関節人工関節全置換手術」があります。
本症例に関しては、「大腿骨頭切除手術」を行なった場合、年齢が11歳とやや高齢であり、長期的なリハビリが体の負担になる可能性と、術後の筋肉量の低下や、歩行に必要な筋肉量の回復が十分に見込めない可能性を考え、「股関節人工関節全置換手術」の適応となりました。
以上、ケースレポート No.2 外傷性股関節脱臼に対して、股関節人工関節全置換術を行なった症例でした。