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犬猫の骨折のお話

犬の骨折は、トイ・プードルを始めとするトイ犬種でよく見られますが、多くは前肢(橈骨尺骨骨折)の骨折で診察に来られます。そのほとんどが、成長期の3ヶ月〜8ヶ月齢という若い年齢で、ちょうど自分で動き回れるようになる活発な生活スタイルへの変化と、骨がまだ未熟なことが重なる時期に、うっかり滑ったりして骨折するようです。

猫の骨折は一般的に、外出時の外傷や事故、もしくは家の中で高いところなどから落下して起こす外傷性の場合が多く、その為“様々な部位の様々な形態の骨折”が見られます。その中でも特に後ろ足での骨折が多く見られます。また猫の場合は年齢も様々で、若齢高齢問わず起こりえます。

治療方法は、ギブス固定治療など外科手術を行わずに治療できる事もありますが、術後の管理のし易さや治療成績から、ほとんどは外科手術による治療が望まれています。犬猫の骨折の治療の多くは内固定法(皮膚の中にインプラントを設置する方法)が用いられています。その代表的な方法が「プレート固定法」です。

  

ほとんどの骨折に対する治療として、プレート固定法は非常に効果的で優れた結果を犬猫の骨折では示してくれています。しかし中には、プレート固定法では非常に難しい骨折を治療しなければならない状況になることもあります。特に猫においては、高いところから誤って落ちたりしたことによる“複雑な外傷性の骨折”をして来院される事があります。

< 1歳の雑種猫 >

家の中で高いところから飛び降りた際、誤って子供のおもちゃの上に乗り、足をとられて右の足首を骨折をしてしまった。

   

レントゲン検査だけでは十分に骨折部位の評価が出来なかった為、CT検査により評価を加えて行いました。

 

 拡大画像

足首の関節の後ろ(尾)側から約7ミリにおける斜骨折を起こしていることがわかりました。

 

この骨折に対する治療は、固定強度を考えるとプレート固定法による足首の関節を含む固定(足根関節固定術)が最も一般的に選択される方法です。その場合この子の今後の生活において、歩いたり走ったりは出来るものの、足首は曲がらなくなってしまいます。

足首の関節の動きも温存して骨折だけを治すためにはプレート固定法では不十分ですが、他の方法としてワイヤーで骨を特殊なリングに吊るすようにして固定する“イリザノフ法”が唯一の方法です。イリザノフ法は、獣医整形外科分野ではあまり一般的に用いられていない方法ですが、このような特殊なケースでは利用便があります。細いワイヤーを弦のように張ることにより強度な固定ができ、このような小さな骨片を十分に固定するのに優れています。

   

なるべく軽い素材でデザインされていますがやはり装具は重そう。

しばらくの辛抱です。

装具が皮膚と干渉しないようスポンジをはさみ、皮膚へのダメージを防ぎます。

 

 

このように犬猫における骨折は、大きさも様々で骨折の形態も様々であり、それら一つ一つに合った治療方法を行うためには色々な治療方法が必要となります。

 

< 読んでいただいた獣医師様へ >

臨床獣医師向けに、このような骨折の治療方法やその考え方などを学べる場として、年に1回“AO Vetコース”が日本でも行われております。今年で13年目になり、非常に関心を持ってこられています。その場ではこのような骨折に対しての治療などについて、卒後教育を行っています。興味がある獣医師の方は是非調べて見てください。

AO VET Course in Yokohama   こちらがリンクです。

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